こんにちは。よんななです。
今日は、中小企業向けのコンサルティング企業として有名な“船井総研”様が出版している著書についてご紹介します。
地域企業の拡大として期待されるコングロマリット経営について詳しく書かれています。
地域でビジネスをしている方やコンサルティングを行っている方、コンサルタントを目指す方におすすめの一冊です。
要約・感想
本書は中小企業の置かれた現状をとらえつつ、地域コングロマリット経営(一見関係が薄いような複数の事業を行う経営を地域で行っていること)について様々な類型やそれぞれの事例などを用いて説明しています。
地域や中小企業が目指すべき成長戦略の一つとして、非常に参考になる一冊でした。
中小企業の成長が地域を活性化する
デービッド・アトキンソン氏の著書『日本企業の勝算』で「各都道府県別の生産性は、主に中小企業の占める割合の大きさで決まります。中小企業が占める割合が大きいほど、その都道府県の生産性は低くなっているのです」と述べられているそうです。
簡単に言うと、中小企業が多い地域ほど生産性が低いという事です。
また、本書では売上100億円から1,000億円の企業を中堅企業と定義づけております。
中堅企業が地域の中心的な存在になっていて、中堅企業が多いと地域の賃金が高く、雇用の創出や所得の安定の面でも重要な役割を果たしています。
そうした売上100億円以上の中堅企業は全企業の上位1%しかありませんが、「コングロマリット経営」を行っている会社のうち、売上100億円以上の企業は15%となっています。
こうしたことからもコングロマリット経営の重要さが分かります。
企業の成長には新規事業が大切
多数の企業体を創出しているサイバーエージェントや、「快活CLUB」という新業態に取り組む紳士服のAOKIなど、新規事業で成長・安定を図る企業は多数あります。
では中小企業がとるべき新規事業の戦略とは?
それは、①時代を先取りしすぎない事、②事業アイディアを創出しない事、③ローカライズする事、④既存事業とのまとまりを意識する事です。
ひとつづつ見ていきましょう。
①時代を先取りしすぎない
これは、わざわざ高いコストをかけて、プロダクトライフサイクルの導入期から参戦しないという事です。
潜在ニーズを取り込みイノベーションを起こすことも大事ですが、資金の少ない中小企業は、ある程度ニーズが顕在化している“成長期の途中から参戦すべき”ということです。
また、注意点は成熟期のピークを迎えてからの参入は避けるべきなので、そこをしっかりと見極める事です。
②事業アイディアを創出しない
これは、新たな事業アイディアを創出するのでなく、すでに世の中にあるアイディアから“最もコストの低い方法を選択する”という事です。
これにより、市場調査や社内の調整、失敗のリスクなどを抑えて新規事業に取り組むことが出来ます。
③ローカライズする
地域に合わせたサービス、商品にすることで、地域に受け入れてもらいやすいものにします。
海外で成功しているビジネスを日本にローカライズして展開する、関東と関西で味を変える、など皆さんも言われてみればわかるような内容ですが、ここをしっかり押さえておくことが成功のカギとなります。
④既存事業とのまとまりを意識する
一見バラバラに見えるようでも、何かしらの関連がある事業に取り組むことが重要となります。
これは、新規事業に取り組む人員や資金、ノウハウなどの面で社内リソースを分散させてしまったり、マネジメントが出来なくなるリスクがあるためです。
経営者はこれらを意識して、事業戦略を練り、資金調達、組織開発を行っていく必要があります。一から自社で開発することもできますが、ここで有効となる策の一つにM&Aやフランチャイズがあります。すでにあるノウハウを買ったり借りたりして成功確率を高めるという事になります。
地域コングロマリット経営の5つの戦略類型
・異業種混合型:既存事業と全く異なる業種への参入
・客層特化型:既存顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を高める戦略
・事業ドメイン特化型:既存事業と同じ業種の中で、新規顧客層を対象とする戦略
・サプライチェーン統合型:サプライチェーンの中で川上や川下へ事業を拡大する戦略
・機能スピンアウト型:既存事業や社内システムにある機能を抽出して他社へ販売する戦略
アンゾフの成長マトリクスに似ていますね。
本書では具体例を交えて細かく説明されております。
これらを参考にして、どういった新規事業に取り組むべきか考えていくと整理がしやすそうです。
目次
・第1章 中小企業に押し寄せる波状攻撃
・第2章 企業規模が勝負を決める
・第3章 地域コングロマリット経営による中堅企業化
・第4章 新規事業を第二本業化する
・第5章 地域コングロマリット経営の戦略モデル
・第6章 リーダーに求められる3つの判断
・第7章 日本の未来を担う地域コングロマリット企業
まとめ
中小企業の成長戦略を描くうえで、新規事業戦略は必ず出てくる話だと思います。
新規事業戦略を考える際に大切な考え方や選択肢が、数々の事例と共に紹介された一冊となっています。
地域ビジネスを行っている経営者、コンサルタントの方はぜひ読んでみてください!

【保有資格】中小企業診断士、簿記2級、応用情報技術者、プロジェクトマネージャ試験
企業で勤めながら、企業内診断士として中小企業支援中
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